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“到達点”のその先に実現した進化とは?

Hi-Fi領域の音質を手中にしたミドル級AVアンプ。デノン「AVR-X2500H」レビュー

公開日 2018/07/04 07:30 岩井喬
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おなじくジャズ音源の「届かない恋」(2.8MHz・DSD)では、エラックのJETトゥイーターの持つ高域特性をよく引き出してくれる。張りのあるホーンセクションやシンバルの煌びやかな描写がクリアにまとめられ、奥まった定位のピアノのハーモニクスも澄み切っている。

AVR-X2500Hの再生能力をチェックするために、ステレオ/サラウンドの両ソースをじっくりと試聴した

リズム隊はやはり締まりがよく、小編成の楽曲ではより楽器単体にフォーカスを絞った、きめ細やかなアタック感、ボディの密度感をリアルに捉える。声の密度感も生々しい。口元や弦楽器の艶もきれいにまとめ、付帯感もない。

ロックはデイヴ・メニケッティ(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)を聴く。ザクザクと小気味良いミュートと、逞しい唸り音の対比が印象的なエレキギターのリフと、弾力良くスムーズなリズム隊が、高密度で厚みあるサウンドを生む。ボーカルのハスキーな質感もよく引き出している。リズムのキレも良いが、全体的に滑らかな音質傾向だ。

シカゴ『17』の「ワンス・イン・ア・ライフタイム」(192kHz/24bit)においては、引き締まったリズム隊が、ホーンセクションの伸びやかさ、シンセサイザーの煌びやかさを一層際立たせる。高域の倍音成分を効果的に使い、アタックを潤い良く響かせるのもいい。

これまでも歴代のデノンの2000番台AVアンプを視聴してきたが、余韻の清々しさ、付帯感の少なさが、世代が新しくなるたびに良い方向へと進化しているように感じる。

全チャンネル同一クオリティのディスクリート・パワーアンプを搭載。音質パーツも上位機と同様のものを多数採用している

Suara「キミガタメ」(11.2MHzレコーディング音源を5.6MHzに変換)は、音離れの良さが印象的で、音像の密度感も高く滑らかで、音運びもスムーズだ。リヴァーブの微細音もしっかりと伸び、息継ぎもリアル。11.2MHz録音ならではの再現性、階調の細やかさを的確に描写している。PCM変換再生だが、DSDらしさも空間表現の端々で実感することができた。

サラウンド再生ではクリアな見通しとローエンドの伸びを両立

前述のように、サラウンド再生にはエラックの240BEシリーズを用いた。本機はインピーダンスが4Ωと鳴らしにくいスピーカーで、AVR-X2500Hがこれらとの組み合わせでどのようなサウンドを聴かせてくれるのか、興味深いところである。また、本機もイマーシブオーディオ対応モデルではあるが、今回はまだまだ多いと思われる既存のサラウンド環境でのセッティングを意識して7.1chを選択。ゆえにトップスピーカーのない環境でも有効なDTS Virtual:Xの効能についても確認した。

マルチチャンネル環境での確認はDTS-HD Master Audio 6.1ch収録の『スカイ・クロラ』チャプター15(空戦シーン)、そしてDTS-HD Master Audio 7.1ch収録の『エクスペンダブルズ2』チャプター9(市街地での戦闘シーン)を用いてみた。

『スカイ・クロラ』においては、戦闘機のエンジン音が締まり良く、移動感もシャープに表現。BGMのローエンドはずっしりと響き、ストリングスは解像度が高く定位も良い。SEやBGMの分離度も高く、各々スッキリと立体的に浮かび上がる。余韻が素早く収束して輪郭が的確に見通せる、リアリティあるサラウンドだ。

セリフはボトムを引き締めたシャープなタッチで、ウェットな張りでまとめている。分離感や抜けも良く、銃声の響きもスマートに描写。空間性、移動感も素直である。

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