NRシリーズ愛用の逆木氏が実力を探る
大人気のスリムAVアンプがさらに進化! マランツ「NR1710」は “いい音” で暮らしを豊かにする
再生にはネットワーク機能/HEOSを使い、アイオナのアルバム『Beyond These Shores』から「Treasure」をはじめとして様々な曲を聴いた。
余談だが、NR1710のネットワーク再生はスマホ/タブレット端末の「HEOS」アプリだけでなく、本体に対するリモコン操作でも行える。ディスプレイと繋げば大画面を使った操作も可能になるため、リビングでの音楽鑑賞に彩りを添えることになるだろう。
再生音はZensor 1の穏やかな音調を素直に活かしつつ、豊かな情報量で楽しめる。ユニットサイズの関係もあり低音の量感は程々ながら、どろどろと不明瞭にはならず躍動感がある。アイオナのボーカリストであるジョアンヌ・ホッグの歌声にも透明感があり、伸びやかだ。先ほどの環境とは異なり、スピーカースタンドを使ってじゅうぶんな設置スペースがあることも相まって、空間の広がりもよく出ている。総じてスピーカー駆動力に不満は感じられず、より大型のスピーカーと組み合わせても問題なさそうだ。
あいにくZensor 1のスピーカー端子はシングル仕様のため、NR1710のバイアンプ機能は活かせなかったが、バイワイヤに対応するスピーカーであればぜひバイアンプ駆動をしたいところだ。
バイアンプ機能にくわえ、映像機器とも接続可能な豊富な入力、自動音場補正など、AVアンプならではの機能が加わることも考えれば、NR1710は純粋に音楽を聴くための「ネットワークオーディオ機能搭載プリメインアンプ」として見ても大きな魅力を持っている。
5.1chや7.1ch用にサブウーファーを含む複数のスピーカーを購入するよりも、その予算をフロントスピーカー2本に集中させた方が、結果的に豊かな体験が実現する可能性もある。このあたりは、音楽と映画のどちらを重視するかを考えて、上手に選択してもらいたい。
筆者はオーディオ/ホームシアターを心の底から愛している。だからこそ、もっともっとこの趣味の魅力を多くの方に伝えたいし、多くの方に味わってもらいたいと常に考えている。そのためには、間口は広ければ広いほどいい。その点で、気合の入った専用室だけではなく、リビングなど現実的な空間において、様々なコンテンツを高品位に再生可能なNR1710の存在は本当に頼もしい。
コンパクトなサイズで多機能と使い勝手の良さを両立し、映像コンテンツの本格的なサラウンド再生はもちろんのこと、純粋に音楽を聴いても満足度は高い。「妥協なき薄型AVアンプ」であるNR1710は、「いい音」によって日々の暮らしを豊かなものにしたいと望むすべての方におすすめしたい。
(逆木 一)