iPodに対抗する「もう一つの軸」への期待
いまさら言うまでもないが、iPodの商品力は非常に優れている。記者自身も第2世代機から使い始め、これまで何台かのiPodを乗り換えてきたし、いまでも何かポータブルオーディオプレーヤーを選べと言われたら、おそらくiPodを買うだろう。
かつてウォークマンが王座に君臨していたポータブルオーディオプレーヤー市場は、いまやiPodによって完全に支配権を握られ、ビジネスモデルを完全にひっくり返された。iPodは単なるコンテンツプレーヤーという存在を超え、ある種のインフラとして機能しはじめている。
これは一にも二にも、iPodが新しい音楽や映像、最近ではゲームやアプリの楽しみ方を提案し、その提案が消費者にとって魅力的だったからだ。結果、世界に名だたる大手AVメーカーですら、iPodのビジネスモデルに組み込まれるという事態になってしまった。
ビジネスモデルをひっくり返されたなら、消費者にとってさらに魅力的なコンテンツとの付き合い方を提示し、もう一度ひっくり返し直すしかない。それが難しいから撤退するメーカーが増えていることは承知しているが、国内AVメーカーの奮起を期待する意味を込めて、もう一度ポータブルオーディオプレーヤー市場を再構築するための方策を考えてみたい。
■ストリーミングオーディオプレーヤーという方向性
現在のiPodの使い方は、まずPCで楽曲をリッピング、あるいは購入し、その後iPodの容量に応じて好みの曲を転送し、外出先などで聴く、というのが一般的だと思う(iPhoneなどは単体でも楽曲購入ができるが、母艦がPCであるという位置づけは変わらない)。
そこで提案したいのが、家庭内のNAS、あるいはPCやPS3などのサーバー機器に楽曲を保存しておいて、それを外出先のプレーヤーでストリーミング再生するというソリューションだ。無線LANやホットスポットの環境は次第に整ってきたし、WiMAXなどの次世代超高速無線網も今後本格的に普及するだろう。あるいは携帯電話の3G網を使っても良い。外出先におけるストリーミングオーディオのインフラは固まりつつある。
ご存じの方も多いだろうが、外出先でのストリーミング再生は、PSPのリモートアクセス機能を使って行うことができる。また動画で同じような機能を実現するものとしてロケーションフリーを思い浮かべる方も多いのではないだろうか。
さらに言うと、このストリーミング再生は、現在のiPhone/iPod touchでも別売りのサードパーティー社製ソフトを購入すれば実現できる。このため、本機能を絶対的な差別化要素とすることはできない。だが、たとえば機器とソフトに標準でこの機能を組み込み、その利便性を強力にアピールすることで、商品コンセプトの違いを明確に際立たせることは可能ではないか。
妄想が膨らんできた。ストリーミングをメインの視聴スタイルとすることで内蔵ストレージは最小限にし、メモリーカードでの容量拡張で対応することで価格をできるだけ引き下げる。これは、ストレージ容量でラインナップの差別化を行っているiPodへのアンチテーゼとなるだろう。
またインターネット経由でのブートに対応したNASなども用意する(PS3は既にPSPからのネットブートに対応している)ことで、サーバー未使用時の消費電力を抑えるなどの工夫を積み重ねる。DRMコンテンツの再生にも対応できれば言うことはない。
ストリーミング再生の魅力を十分に伝えるため、これまでの音楽配信サービスの常識も壊す必要がある。通常の音楽配信サイトでは、ダウンロードしてから再生するという操作が必要となる。この「ダウンロード」を不要にし、大量の楽曲をそのままストリーミング配信するというのはどうだろう。
この種のサービスはすでにナップスターなどが展開しているが、ナップスターで対応しているのはPCでのストリーミング再生のみ。デジタルオーディオプレーヤーだけで、配信サイトから直接ストリーミング再生が行えれば、利便性は大きく向上する。さらに定額制にすれば、いつでもどこでも、大量に用意されたラインナップの中から好きなだけ音楽が楽しめる、という新たなスタイルが実現する。
ここに挙げたのは、あくまで一つのアイデア。実際にビジネスとして展開するのは少々無理があるかもしれない。ただし、どんな戦略を採るにせよ、ハード、ソフト、サービスまで一貫したトータルソリューションを構築し、高度な機能をかんたんに使いこなせる優れたユーザーインターフェースを提供することが必要となるのは間違いない。
かつてウォークマンが王座に君臨していたポータブルオーディオプレーヤー市場は、いまやiPodによって完全に支配権を握られ、ビジネスモデルを完全にひっくり返された。iPodは単なるコンテンツプレーヤーという存在を超え、ある種のインフラとして機能しはじめている。
これは一にも二にも、iPodが新しい音楽や映像、最近ではゲームやアプリの楽しみ方を提案し、その提案が消費者にとって魅力的だったからだ。結果、世界に名だたる大手AVメーカーですら、iPodのビジネスモデルに組み込まれるという事態になってしまった。
ビジネスモデルをひっくり返されたなら、消費者にとってさらに魅力的なコンテンツとの付き合い方を提示し、もう一度ひっくり返し直すしかない。それが難しいから撤退するメーカーが増えていることは承知しているが、国内AVメーカーの奮起を期待する意味を込めて、もう一度ポータブルオーディオプレーヤー市場を再構築するための方策を考えてみたい。
■ストリーミングオーディオプレーヤーという方向性
現在のiPodの使い方は、まずPCで楽曲をリッピング、あるいは購入し、その後iPodの容量に応じて好みの曲を転送し、外出先などで聴く、というのが一般的だと思う(iPhoneなどは単体でも楽曲購入ができるが、母艦がPCであるという位置づけは変わらない)。
そこで提案したいのが、家庭内のNAS、あるいはPCやPS3などのサーバー機器に楽曲を保存しておいて、それを外出先のプレーヤーでストリーミング再生するというソリューションだ。無線LANやホットスポットの環境は次第に整ってきたし、WiMAXなどの次世代超高速無線網も今後本格的に普及するだろう。あるいは携帯電話の3G網を使っても良い。外出先におけるストリーミングオーディオのインフラは固まりつつある。
ご存じの方も多いだろうが、外出先でのストリーミング再生は、PSPのリモートアクセス機能を使って行うことができる。また動画で同じような機能を実現するものとしてロケーションフリーを思い浮かべる方も多いのではないだろうか。
さらに言うと、このストリーミング再生は、現在のiPhone/iPod touchでも別売りのサードパーティー社製ソフトを購入すれば実現できる。このため、本機能を絶対的な差別化要素とすることはできない。だが、たとえば機器とソフトに標準でこの機能を組み込み、その利便性を強力にアピールすることで、商品コンセプトの違いを明確に際立たせることは可能ではないか。
妄想が膨らんできた。ストリーミングをメインの視聴スタイルとすることで内蔵ストレージは最小限にし、メモリーカードでの容量拡張で対応することで価格をできるだけ引き下げる。これは、ストレージ容量でラインナップの差別化を行っているiPodへのアンチテーゼとなるだろう。
またインターネット経由でのブートに対応したNASなども用意する(PS3は既にPSPからのネットブートに対応している)ことで、サーバー未使用時の消費電力を抑えるなどの工夫を積み重ねる。DRMコンテンツの再生にも対応できれば言うことはない。
ストリーミング再生の魅力を十分に伝えるため、これまでの音楽配信サービスの常識も壊す必要がある。通常の音楽配信サイトでは、ダウンロードしてから再生するという操作が必要となる。この「ダウンロード」を不要にし、大量の楽曲をそのままストリーミング配信するというのはどうだろう。
この種のサービスはすでにナップスターなどが展開しているが、ナップスターで対応しているのはPCでのストリーミング再生のみ。デジタルオーディオプレーヤーだけで、配信サイトから直接ストリーミング再生が行えれば、利便性は大きく向上する。さらに定額制にすれば、いつでもどこでも、大量に用意されたラインナップの中から好きなだけ音楽が楽しめる、という新たなスタイルが実現する。
ここに挙げたのは、あくまで一つのアイデア。実際にビジネスとして展開するのは少々無理があるかもしれない。ただし、どんな戦略を採るにせよ、ハード、ソフト、サービスまで一貫したトータルソリューションを構築し、高度な機能をかんたんに使いこなせる優れたユーザーインターフェースを提供することが必要となるのは間違いない。