スペシャルインタビュー
東芝のAV&PC技術陣が一堂に集結 − 全録レコーダーとタブレットの最強マッチングに山之内正が迫る
●ソーシャルサービスとの融合
コミュニケーション面を重視して新サービス展開
山之内 今回のテーマは、東芝がこの秋に提唱した「レグザワールド」のバックボーンに踏み込むことです。レグザタブレットの開発ストーリーやレグザサーバーとの連携を実現した技術面の実際等をお聞きすることにしましょう。
片岡 AV機器とネットワークとの関係は、これまでは機器側が主でサービスが従という形でした。しかし、ネットワークというものは更新やアップデートの頻度が非常に多い。ハードウェア的な発想でそれに対応しようとしても、どうしてもスピード感が欠けてしまいます。一回始めたサービスは機種が古くなったとしてもサポートし続ける必要がありますし、簡単に変えるわけにもいかない。サービスそのものの発展に関しても足を引っ張る結果につながりかねません。
山之内 そこで今回、機器とサービスを分離して、ネットワーク上の変化に対して柔軟に対応するという考え方を採用したわけですね。
片岡 はい。横断的なサービスを機器主体で考えるのではなく、アプリケーションベースで提供していく。そうすることで世代や機種の垣根を越えた利便性が最適に提供し続けられると考えました。機能が陳腐化する速度を考えると、機器側に全ての役割を委ねるのは時代に合いません。セパレートすることで機器側の負荷を最小限にとどめることができるので、レコーダーやテレビは画や音のクオリティ向上といった、純粋にコンテンツを再生する役割に専念すれば良いというわけです。
山之内 東芝の場合は、ソーシャルな部分での取り組みも特徴的ですね。
片岡 2010年の10月に既に録画済み番組のチャプターを共有するアプリ「タグリストシェア」を提供しています。その次にDLNA機能を活用したものを、そして今回はタブレット側に動画を持ってきて視聴可能にするという新たなフェーズに突入しています。これらにソーシャルな機能との複合性を持たせて有機的にコンテンツが楽しめる仕組みを構築しています。
山之内 新しいユーザーの獲得のためにはとても大事なことですね。
片岡 昨今、若年層のテレビ離れが喧伝されています。パソコンで番組視聴も兼用し、録画せずネット上の動画で済ませてしまう。これまでと常識が異なる層でも使えるようなデバイス、親和性が高い仕組みを構築していく必要性があります。視聴形態がどんどんパーソナル化していく中で、単なる動画視聴だけではなく、ソーシャルサービスとの有機的な結びつきを追求することが大事だと考えています。
山之内 今回は新たに3つのアプリを提供していますね。
片岡 テレビが置いてある場所以外でも録画番組が自由に観られる「RZプレーヤー」。レグザサーバーで受信したオンエア番組をダイレクトに楽しめる「RZライブ」、そして録画番組を持ち出せる「RZポーター」です。タブレット向けでは、全てTwitterに対応し、観ているものに対して関連した情報を拾ったり、投稿に参加したりといったソーシャルな体験ができるようにしています。特定のあるいは不特定の他者とコンテンツを接触する楽しさを共有しやすい仕掛けがここにあります。単なる動画配信だけを目的とするのであれば他社もすぐ可能となるでしょうが、ソーシャルな視点をメインに置くサービスは当社独自のものです。主体は「動画」以上に「コミュニケーション」にあると考えています。
山之内 アプリケーションの更新や機能追加はPCでも役割が果たせます。PCとタブレット、あるいはスマートフォンとの一番の違いは何でしょうか?
片岡 タッチパネル特有の操作感の良さ、起動のサスペンドとレジュームの仮想的な早さ。それから機能の追加・削除が簡単にできる手軽さでしょうね。
●ベンチマークに対する優位性
全てのベンチマークを徹底的に研究し尽くした
山之内 タブレットの世界には、ベンチマークとしてアップルのiPadが存在します。iPadと東芝タブレットとの違いがどのあたりにあるのかを教えてください。iPadの場合は、DTCP-IP技術規格に本体で対応することは考えづらいですね。まずそこがアドバンテージでしょうが。
長尾 当社も発売しているウルトラブックなど、PCも非常に薄く起動も早くモバイル性も高いので、一概にiPadだけがベンチマークというわけではありません。PCとの違いでは、より手軽にネットや映像コンテンツなどが楽しめるのがタブレットの良さです。その上で当社の強みである薄型軽量ボディで映像を高品位に楽しめるよう仕上げたのが「AT700」というわけです。
山之内 つまり、画質が良いということですね。
長尾 アドバンテージの一つはそういう部分です。画面解像度は1280×800ですが高画質化技術「レゾリューションプラス」が入っていることもアドバンテージです。
上條 画面の明るさに合わせてコントラストを最適に調整するバックライトコントロールも、独自の技術が盛り込まれています。
山之内 つまり、動画視聴に適した仕様を心がけているということですね。本機に搭載されたパネルはフルHDではありませんが、タブレットの基準で言うと、そこまでのスペックは必要ないのでしょうか?
上條 PC用とTV用でパネルそのものの特性が異なります。静止画や文字が見やすいようにコントラストが強調されているものがPC用。動画が自然に楽しめる特性を持っているのがTV用です。「AT700」に搭載されたパネルは基本的にはPCベースのものですが、それに対して例えば「レゾリューションプラス」を搭載することで、動画再生に関してもタブレットに最適な高画質を実現しています。
山之内 動画視聴を考慮しているという話ですが、視聴スタイルには一考の余地があるのではないでしょうか? フラットな板を常に手で持つという習慣は今までなかったわけですから。あえてiPadと違う提案があっても良かったような気がします。
上條 オプションとして卓上スタンドも用意しています。そういったものを併せてご活用いただければ長時間視聴にも無理なく対応できると思います。
山之内 ラインアップには7インチの「AT3S0」もあります。両者の画質における取り組みはほぼ同じですか?
上條 解像度や高画質化技術は同じですが、商品の方向性が違います。
山之内 見え方は両者で異なりますね。「AT700」の画の方が非常にクリアに感じます。
長尾 「AT3S0」は「AT700」のダウンサイジングではなく、7型液晶搭載ボディであり、電子書籍用途などの情報端末をより意識しています。
山之内 分かりました。ところで、画質向上の取り組みはバッテリー駆動時間をキープする目的とトレードオフになるはずですね。
上條 「AT700」では薄さやデザインにこだわっていますのでバッテリー容量に制限がでてしまいますが、省電力で動画再生に最適なSoCを採用しています。また、高画質化技術はクオリティをキープしつつ低消費電力となるよう最適化しています。