【特別企画】一瞬で引き込まれる、美しい4K有機ELテレビ
ソニーの4K有機ELテレビ「ブラビア A1」誕生。画質・音質を山之内正がチェック
次にライブ映像を見る。レース模様が入った白地の衣装を歌手が着ているため、照明を落とした客席を背景にスポットが当たるとテクスチャーがわかりにくく、背景が不自然につぶれてしまうと雰囲気が伝わりにくい。HDRリマスターをオンにすると白飛びが目立ちにくくなり、暗部の明暗差もなめらかに再現する。画面全体の明るさが本来のバランスを取り戻すためか、臨場感が大きく向上する。
京都の古民家が登場するドキュメンタリーでは、年代物の家具、天然素材の質感、京野菜の微妙な色合いなど、そこに映し出されているものの本来のテクスチャーや色合いを誇張せず正確に再現していることに気づく。
肌色も含め落ち着いた色調で再現し、暗部で不自然に色が濃くなる現象も気にならない。有機ELテレビは液晶との違いを際立たせるために色やコントラストを強調気味にチューニングする例も見かけるが、やはり自然な描写ができるテレビの方が好ましいことはいうまでもない。暗部に色の強調がないか、人物のスキントーンが正確に出ているかなどを見極めることをお薦めする。
映画では『アラビアのロレンス』の星空と砂漠での野営シーンを見ればOLEDならではのコントラスト表現の余裕が一目瞭然だ。吸い込まれるような漆黒のなかに無数の星が煌めく様子や下限ぎりぎりの低輝度領域で表情の重要な変化を描き出す、リニアで忠実な明暗表現はフィルム作品でも本領を発揮する。
特に黒側ぎりぎりの領域での階調表現はパネル性能だけで決まるわけではなく、各社の製品間で差が出やすい。微妙なグラデーションの再現を求めており、A1の実力は他製品を確実に上回っているように感じられた。
■映像への没入感を高める音とデザインのこだわり
筆者がソニーらしさととらえた2つ目の特徴は「アコースティック サーフェス」だ。画面から直接音が出るのは間違いなくディスプレイの理想の形態で、ノートパソコンなどで実現した例はあったものの、今回のA1ほどの大面積で忠実度の高い再生音を実現した例は他に見当たらない。
左右各2基ずつの小さなアクチュエーターでパネル全体の振動を励起し、背面スタンド内蔵のサブウーファーから再生する低音と組み合わせることによって画面からそのまま音が出る仕組みで、パネル内にバックライト機構が存在する液晶方式では真似できないOLEDパネルならではの技術である。
パネルは一枚の連続した板なので左右のセパレーションを確保するのはかなり難しいはずだが、試行錯誤を繰り返すことで見事に目的を達成している。A1シリーズはそれに加えて自然な音像定位も実現しており、まさに映像と音声の重心が一致する感覚を味わえる。
3つめのポイントはデザインの革新性である。一枚の板に映像を映し出すという究極のワンスレートコンセプトを掲げ、スタンドの存在を意識させないスタイリッシュな構造を工夫。
2番めに挙げたアコースティック サーフェスの採用とも関連するが、既存のスピーカー形式ではこの斬新なスタイルを生むことはできなかったはずだ。デザインの統一性は背面にも及んでおり、OLEDならではのスリムなパネル構造という重要な特長も確実に伝わってくる。
画質はOLEDらしさを誇示するというよりも原画に忠実で正確な描写にこだわっていることがソニーらしいと感じた。そして、従来技術を洗練させて次元の高い再生音を実現したアコースティックサーフェスにエンジニアのこだわりを実感。独自性の強いデザインもまたソニー製品に私たちが期待する重要なフィーチャーだ。
この3つのこだわりを融合させることによって新たな付加価値が生まれ、A1シリーズはこれまで以上にプレミアム性の高い製品に仕上がった。ソニーにとってOLED大画面モデルの第一弾だが、完成度の高さは疑いようがない。
(特別企画 協力:ソニーマーケティング)