海上忍のラズパイ・オーディオ通信(36)
ラズパイより音がいい!? ASUSの「Tinker Board」のオーディオ的実力を検証する
まず、I/O周りの質が違う。Raspberry Piは、EthenetとUSBがバスを共有する(EthernetトラフィックはUSBバスを経由する)ため、USBストレージに保存した楽曲を再生するとやや歪み/鈍りを感じることがあるが、Tinker BoardはEthenetとUSBのバスが独立しているためか、USBストレージの不利を感じない。USBとEthenetのいずれもスループットはRaspberry Pi 3を上回っており、容量の大きいハイレゾ音源でも遅滞なく再生してくれる。バスが分離されている効果か、USB DACから出力したときの聴感上のS/NもRaspberry Pi以上だ。
オンボードの3.5mmヘッドホン端子から出力すると、クオリティがまるで違う。搭載されたオーディオチップ(RTL ALC4040)が最高192kHz/24bitの出力に対応するため、拡張ボードやUSB DACなしにハイレゾ音源を再生できるということもあるが、ノイズを抑える設計が採用されているからだ。
Raspberry PiオンボードのDA変換回路は、PWMを利用した疑似アナログ出力とローパスフィルタという単純な構成のため、PWM由来のノイズが重畳してしまい、とてもHi-Fi再生とはいえなくなるが、Tinker Boardは駆動力に物足りなさを感じるもののそこそこ聴ける。
S/PDIF出力が用意されていることもポイントだ。基板上にパターンとスルーホールが用意されているだけで配線および端子は自前で用意しなければならないが、最大192kHz/24bitをデジタル出力できる拡張性は評価できる。
難点があるとすれば発熱だ。SoCの「Rockchip RK3288」は動作クロックが高いこともあり発熱量が大きく、熱対策が不可欠。そのためヒートシンクが付属しているほどだ(手前味噌で恐縮だが、CASE 01では高さ6mmのヒートシンクを用意すると、適度なテンションを加えつつ銅プレートに熱を逃がせる設計にしている)。
ただし、ソフトウェア(OS)開発はRaspberry Piを後追いしているのが現状で、追い越すほどの勢いはない。GPIOのピンアサインは基本的に同じはずだが、Raspberry Pi用に開発されたDACボードを正式サポートするOSがいまだ登場しないなど、解決されるべき課題もある。
明らかにノイズが少ないオンボード3.5mmヘッドホン端子はさておき、USB DAC出力でも十分音質面でのアドバンテージがあるため、より高品質・高音質を狙うユーザーのためのアップグレードパスとして普及してほしいところだ。