Hypex社Ncoreアンプモジュールを採用
その音に価格もサイズも疑った。15万円切りのパワーアンプ TEAC「AP-505」は次世代オーディオの模範だ
次に、クラシックから2.8MHz DSDのカラヤン指揮ベルリンフィルによる『モーツァルト:レクイエム』を再生した。ソロの歌い手はオーケストラの手前に生々しく描写され、その対比をよく再現してくれる。音の鮮度、透明度が高いので、弦楽、管楽器、合唱のそれぞれで、情報量が多く血の通った響きが聴け、穏やかな音階では中低域にどっしりとした厚みも感じることができる。こうした美点が、演奏の臨場感を鮮明にしていくのだから凄い!
AP-505は、サイズを超えたスピーカー駆動力と、中低域に厚みのあるやや暖色傾向の音質が魅力といえる。ハイエンド的な音質、と言ってもいいだろう。私好みの高品位な回路がそれを裏付けている。
最後に、AP-505を2台用いた際の音質も確認した。BTLモードに設定して、同様の曲を再生していった。特に大きく変化したのは、空間の広がりで、奥行きもさらに深く描き出してくれる。当然のことながら駆動力には余裕が生まれ、さらにスケールの大きな演奏が体験できた。高域の伸びと低域のレスポンスは、1台で駆動した際と比較して特に高まった印象を受けた。音楽に躍動感や深みが加わり、この2台使いの音を聴いてしまうと、ちょっと後戻りできなくなってしまうのである。
ティアックはCG-10M、AX-505に続き「またしても、やってくれた」。
とても15万円以下のパワーアンプとは思えない技術と音質だ。しかも発熱はほとんどなく、電源効率も高い。消費電力も低いのである。
きっとこの音には、熟練オーディオ愛好家も思わず唸ってしまうことであろう。私なら専用ラックを自作して、縦に“505シリーズ”を並べたくなる。ティアックの最新レコードプレーヤー「TN-4D」も加えたくなる。バランスケーブルを延長し、スピーカーの近くにAP-505を設置するのもいいだろう。これだけコンパクトで、ハイエンドオーディオのようなサウンドが味わえるトータルシステムは、そうそうないであろう。それほどに、今回のAP-505登場には意味があり、魅力的に思えるのである。
(角田郁雄)