PR評論家 山之内正がレポート
マランツ、未踏の領域へ。「次元が異なる」弩級フラグシップコンビ「MODEL 10」「SACD 10」レビュー!
格段の進化を遂げた“妥協のないディスクプレーヤー”「SACD 10」
SACD 10はディスク再生に照準を定めた妥協のないディスクプレーヤーで、現行最上位のSA-10から格段の進化を遂げている。MODEL 10同様、筐体構造は堅固をきわめ、フロントとサイドパネルだけでなくトップカバーにも分厚い削り出しアルミ材を配して共振対策を徹底。ハイエンド機器にふさわしいゴージャスな外観も圧巻だ。立体的な造形がLED照明で際立ち、マッシブだが洗練された美しさをたたえている。
内部構造はMODEL 10と同様の2フロア構成で、重量級の3層ボトムシャーシの上にメカドライブとアナログ・デジタル独立構成の電源回路を配置。上層にはデジタル基板とディスクリートDAC「MMM」を独立した基板配置で構成している。
MMMはアナログフィルター回路のバッファICと抵抗の構成を見直すことで、出力電流の向上と低ノイズ化を実現するなど、最新世代に進化。アナログオーディオ回路は左右対称配置とし、L/R ch間に銅板のセパレーターを配置するなど、ノイズ対策もきめが細かい。
そのほか8層基板の導入や新設計HDAMの採用などが功を奏し、S/Nの改善幅は実に8dBを超えている。マランツがデジタルコンポーネントの開発で蓄積してきた技術を総動員することで、通常のアプローチでは成し得ないほどの劇的な音質改善を果たしたのである。
MODEL 10/SACD 10 音質レビュー:「楽器間のセパレーションの高さは次元が異なる」
マランツの試聴室でB&Wの801 D4を組み合わせ、SACD 10とMODEL 10の再生音を確認した。新しい10シリーズは801 D4のポテンシャルを完全に引き出すことを開発目標に掲げているので、その狙いをどこまで実現できているのか、検証しながら試聴を進めた。
ジョン・ウィルソン指揮シンフォニア・オブ・ロンドンによるラフマニノフの交響曲第2番(CHANDOS SACDハイブリッド)の終楽章は静と動の対比を鮮やかに描き出し、広大なダイナミックレンジを余すところなく再現してみせた。ステージ上に展開する各楽器セクションの位置関係を3次元で描写することに加えて、余韻が左右や上方に広がる様子がリアルで、録音会場の空間の大きさが目に浮かぶほどだ。
リズムを刻む低弦とティンパニは空気が動くスピードが速く、細かい音符の動きに曖昧さがない。立ち上がりが速いだけでなく音を余分に引きずることがないので、低音に過剰な重さがなく、演奏のテンポ感は爽快そのもの。801 D4ならではの低音の精緻な質感と時間応答の精度の高さをたっぷり味わうことができた。
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