<山本敦のAV進化論 第192回>
ソニー「Xperia 1 II」開発者に聞いた、プロも納得の贅沢機能を“凝縮”できた理由
■10億色以上の色彩再現に対応。4K/OLEDは「人の目と最先端のAI技術」により追い込んだ
Xperia 1 IIのディスプレイ設計には、2019年に発売したXperia 1から引き続き、キーパーソンとして松原氏が関わっている。新モデルのディスプレイは、スペックこそ変わってていないが、さらにリファインチューニングを施したという。
チューニングのひとつは、画質設定「クリエイターモード」のカラーマネージメントを、より丁寧に追い込んだというもの。そのために開発チーム内で「AIチューニング」と呼んでいる新しい手法も採り入れた。
Xperia 1 IIにはHDR、BT.2020の色域、10bit信号に対応した4K有機ELディスプレイと、独自開発の画像処理エンジンを搭載している。先ほども説明したようにパネルの仕様はXperia 1から変わらず、10億色以上の色彩を再現できる。Xperia 1ではエンジニアの目視による主観画質評価をメインにしていたが、人の目だけでは検知できない違いにまで踏み込んでチューニングを行うため、AIを使って、人の目と両方で画質を追い込んだと松原氏が説明する。
具体的には、ソニーの最新業務用マスターモニターの測定値をベースにAI解析のリファレンスになる「モデル」をつくり、人の目だけでは調整できない膨大な数のカラーテーブルをピックアップしながら、Xperiaの画質を「モデル」に合わせ込んでいく。松原氏は「パッと見ではわからないかもしれないが、丁寧に追い込んだ画質の違いが現れていると思います」と胸を張る。
新機種では「ホワイトバランス調整」がより直感的にできるようになった。映像をプレビューしながら、標準光源/色温度の値を変えて好みのバランスにカスタマイズできる。アップデートの背景について、松原氏が次のように話している。
「Xperia 1をお使いのクリエーターから、ホワイトバランス調整の基準がわかりにくいというご指摘をいただきました。プロの方に合わせるといっても、D65、D55といった専門用語をスマホの設定に使うのはどうなのか、という社内の議論もありましたが、Xperia 1 IIのコンセプトである “好きを極める” ための仕様として、プロフェッショナルに寄り添った設定項目にしています」(松原氏)
D表記の設定値についてはソニーのマスターモニターを基準に合わせ込んでいるが、その仕様にはない設定値「D50」は、今後需要が高まると見込まれる、静止画データの印刷用途を考えて加えたそうだ。
さらに、ゲームなど5G時代のエンターテインメントに対応するため、Xperia 1 IIから新たに「残像低減設定」を加えた。こちらの機能をオンにすると、ネイティブ値では60Hz駆動となるパネルの画素に掛かる負荷を精密にコントロールし、より高速応答が求められる動画箇所では一時的に負荷を上げて90Hz相当にブーストし、残像感を低減する。
ゲーミングコンテンツの表示に最適な「ゲームエンハンサー」機能も備える。この設定をオンにすると、パネルの残像低減も含む端末の総合的なパフォーマンスをゲーミング用途に最適化して、プレイ感の向上を引き出す。